#008「甲子園を7回制に?」いまの高校1年生の代から変わるかも
甲子園で行われている試合は、9回まであります。この回数を7回に短くするかどうかが、いま議論されています。2026年の全国高校野球選手権大会は8月5日に開幕し、今大会は9回制です。その1週間前の7月29日、日本高等学校野球連盟は7回制をめぐる話し合いの記録を公式サイトで公開しました。
短くしたい理由は、夏の暑さと球児たちへの負担です。この案に対して、新聞の社説は「ほかに良策はないのか」と問いました。一方で高野連自身の報告書は、7回制にすることが高校野球のかかえる課題を解決するうえで「極めて有効だ」と結論づけました。この1つの事実から、2つのニュースを読み比べます。
ショート動画 (55秒|ミケ・はな出演)
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Q1. 今年の甲子園は7回で終わるの?
いいえ。2026年の全国高校野球選手権大会は9回制で行われています。7回制の採用は「2028年の春からが望ましい」という提案の段階にあり、決まったわけではありません。
2026年2月20日の理事会では、今年の夏から導入したほうがよいという意見と、報告書の意図が現場に十分伝わっておらず性急すぎるという意見の両方が出ました。今年の選手のことを考えるとこの時期に変えないほうがよいという結論になり、今大会は9回制で実施することが決まりました。いま議論されているのは、これから先の大会の話です。
Q2. 7回にすると、実際にはどれくらい変わるの?
日本高野連の報告書によれば、試合時間は約2時間から約1時間30分へ約30分、投球数は約130球から約100球へ約30球減ると予測されました。2025年の国民スポーツ大会を7回制で行ったところ、この予測どおりの結果になったと書かれています。
ただし報告書は、7回制が数字のうえで健康リスクを下げるという明確な根拠があるわけではないとも認めています。連盟の医科学委員である専門家は「9イニング制より7イニング制の方が、部員、観客、大会を支える関係者の健康への安全域を拡げるという意味で有効」と述べており、「危険が確実に減る」ではなく「安全の余裕が広がる」という言い方になっています。数字を読むときは、この差に気をつけます。
Q3. 加盟校に反対が多いのに、なぜ進めようとしているの?
高野連が挙げている理由は4つです。部員の数が減っていること、投手のけがを防ぐこと、熱中症、そして先生の働き方。2023年の調査では監督の92.9%が教員で、都道府県連盟の役員の多くも教員が担っています。試合が短くなれば、この人たちの負担も軽くなるという見通しです。
高野連自身も、報告書の中で説明が届いていないことを認めています。「加盟校や高校野球を支えるファンらのアンケート結果を見ると、その意図や有効性が〔加盟校やファンに〕十分に伝わっているとは言い難い」(〔 〕内は編集部が補いました)。届いていないと認めたうえで、それでも進めたいと言っているところが、この議論の分かりにくさの中心にあります。
その背景には、学生野球が国や自治体から独立した組織で運営されているという考え方があります。報告書は、事故が起きてから改善するのではなく自ら変わることが「自主自律」につながる、と書いています。この考え方に納得するかどうかで、同じ4つの理由の受け取り方が変わります。
出典 (参照したニュース)
- 東京新聞<社説>高校野球7回制 ほかに良策はないのか (2025年8月4日)
- 日本高等学校野球連盟「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」の結果報告 (最終報告書) (2025年12月5日)
- 日本高等学校野球連盟7イニング制報告書に関する意見交換会・第1回 (2026年7月29日公開。開催は2026年5月30日)
- 日本高等学校野球連盟7イニング制報告書に関する意見交換会・第2回 (2026年7月29日公開。開催は2026年6月6日)
- 中国新聞<社説>高校野球7回制案 球児の声踏まえ熟考を (2026年7月29日)
- 北國新聞【高校野球7回制】終盤なければ魅力も半減 (2026年7月11日)
- 日本経済新聞高校野球 夏の甲子園、7イニング制見送り 国スポは引き続き採用 (2026年2月20日)
- 日本高等学校野球連盟第108回全国高等学校野球選手権大会 (大会日程) (2026年)
文字起こし (動画のナレーション全文)
タイトルこんにちは。「2つのニュース」です。今日は「高校野球の7回制」について、1つの事実、2つのニュースをお届けします。 いま甲子園で行われている試合は9回まで。この回数を7回に減らす案が議論されています。
1つの事実2026年の全国高校野球選手権大会は8月5日に開幕しました。今大会は9回制です。 その1週間前、日本高野連は7回制をめぐる話し合いの記録を公式サイトで公開しました。 議論の理由は、夏の暑さと球児たちへの負担です。 高野連の見込みでは、9回を7回にすると試合時間が約30分、投球数が約30球減ります。
東京新聞「ほかに良策はないのか」この案に、2つの見方があります。1つめは東京新聞の社説です。 見出しは「高校野球7回制 ほかに良策はないのか」。去年、2025年の甲子園が開幕する前日に書かれた記事です。 東京新聞は、7回制の良い点をまず認めています。試合が短くなり、けがも熱中症も減らせる。 そのうえで心配も挙げています。プロ野球も大学も社会人も、野球といえば9回制であることです。 高校だけが7回になれば、競技力が落ちるのではないか。 そこで別の案を出しました。ベスト8から先は甲子園、それ以外は各地のドーム球場で行う案です。 東京新聞は、こう結んでいます。「九回に起こったドラマの数々を深く記憶に刻んでいるファンも多いだろう。球児らが最も輝ける改革とは何か。それを真摯に考えてほしい。」
日本高野連「7回制は極めて有効だ」2つめは、日本高野連そのものの報告書です。 去年12月、1年かけて話し合った検討会議が、7回制は極めて有効だと結論づけました。 理由は4つあります。部員の数が減っていること。投手のけが。熱中症。そして先生の働き方です。 監督の92.9%は先生です。試合が短くなれば、支える人の負担も軽くなります。 高野連は、この案にも答えています。 ドームに移す案も出たが、費用と日程を大きく変える必要があり、難しいという結論に至った。
現場の声現場の声も分かれます。大阪桐蔭の西谷監督は、断固反対したいと話しました。 掛川西の大石監督は、1イニングは単なる3アウトではなく成長の貴重な機会だと言います。 一方で医師からは、応援のブラスバンドの子にも熱中症が増えているという声が出ます。
2つの視点・まとめ東京新聞はほかに良策はないのかと問い、高野連は早急に結論を出してほしいと書きます。 両者とも高校球児を大切にしたいという思いは同じですが、急ぐか、立ち止まるか、大切にする部分への重みの付け方で議論が分かれています。 今年の夏は9回制のままです。高野連は、7回制は2028年の春からが望ましいと提案しています。それはいまの高校1年生が高校3年生になる年です。 変わるとしたら、いまの高校1年生の代からかもしれません。あなたなら、どちらを選びますか。 今日は「高校野球の7回制」に関する、1つの事実、2つのニュースでした。
高野連が2025年12月にまとめた最終報告書によれば、9回制を7回制に変えると試合時間は約2時間から約1時間30分に約30分短くなり、投球数は約130球から約100球に約30球減ると予測されました。2025年の国民スポーツ大会を7回制で行ったところ、この予測どおりの結果になったと報告書は書いています。

7月29日に公開された記録には、2026年5月と6月に大阪市で開かれた2回の会で、監督・大学教授・医師・法学者ら12人が発言した内容が実名で載っています。大会が9回で行われているその裏で、7回にする話し合いが進んでいます。
1つめは、東京新聞の社説です。去年、2025年8月4日、夏の甲子園が開幕する前日に書かれました。1年前の記事です。
東京新聞は7回制の良い点をまず認めています。試合時間が短くなって大会運営が柔軟になること。肩や肘の負担が軽くなってけがを防げること。炎天下でのプレー時間が減って熱中症対策になること。交代要員が少なくてすむので部員の少ないチームも参加しやすくなること。議論の発端が野球人口の減少にあることも押さえていて、2025年の硬式部員数は約12万5千人で10年前より25%以上減ったと書いています。
そのうえで2つの心配を挙げます。プロ野球・大学・社会人が9回制なのに高校だけが7回になれば、試合形式の連続性が失われて競技力が落ちるのではないか。そして従来の大会記録が参考記録になってしまうこと。
そこで別の案を出しました。開会式・閉会式とベスト8以降は甲子園で行い、それ以外の試合は各地のドーム球場で行う。多くの試合を空調の下で行えるうえ、聖地を離れないので伝統も守られる。そういう案です。

社説はこう結んでいます。
「九回に起こったドラマの数々を深く記憶に刻んでいるファンも多いだろう。球児らが最も輝ける改革とは何か。それを真摯に考えてほしい。」
2つめは、日本高野連そのものの報告書です。新聞の社説ではなく、当事者の団体が出した公式の文書です。
2025年1月から11月まで計10回開かれた検討会議が、同年12月5日に最終報告書を出しました。結論は、7回制の採用は「課題解決ならびに改善を目指すうえで極めて有効である」というものです。理由は4つ。部員の数が減っていること。投手のけがを防ぐこと。熱中症。そして先生の働き方です。2023年の調査では監督の92.9%が教員で、都道府県連盟の役員の多くも教員が担っています。
報告書は、東京新聞が出したような案も検討したうえで退けています。第1回の意見交換会で高野連の井本亘事務局長は、ドームに移したり時期をずらしたりする意見もあったが、費用と年間日程を大きく変える必要があり現実的には難しいという結論に至った、と述べました。

高野連は報告書の中で、反対意見があることも認めています。「賛成できないとする意見もあった」。さらに「加盟校や高校野球を支えるファンらのアンケート結果を見ると、その意図や有効性が〔加盟校やファンに〕十分に伝わっているとは言い難い」とも書いています。〔 〕の中は編集部が補いました。つまり高野連は、自分たちの説明が現場にもファンにも届いていないと認めたうえで、それでも早く進めるべきだとしていることになります。
そのうえで全ての公式戦での採用は2028年の第100回記念選抜大会からが望ましいとしました。その年を選んだ理由は、いまの高校1年生が高校3年生になる年だからです。報告書は公表時点 (2025年12月) の言い方で「現在の中学3年生」と書いていますが、それはいまの高校1年生のことです。総括はこう結ばれています。「この検討結果について、理事会で早急に議論し、結論を出していただきたい。」
東京新聞が出した問いに、高野連が名指しで答えている箇所があります。ドーム球場を使う案です。東京新聞は「聖地を離れないことで伝統も守られる」と書き、高野連は「現実的には難しい」と答えました。
| ほかに良策はないのか 東京新聞 社説 (2025年8月4日) | 7回制は極めて有効だ 日本高野連 最終報告書 (2025年12月5日) | |
|---|---|---|
| 7回制の見方 | 良い点は認める。ただし野球の本質にかかわる変更 | 完全な解決ではないが極めて有効 |
| いちばんの心配 | 高校だけ7回になり競技力が落ちること | 対策のないまま重大事故が起きること |
| 代わりの案 | ベスト8以降は甲子園、ほかはドーム球場 | ドームも検討したが費用と日程で難しい |
| 求めていること | 柔軟かつ慎重に結論を導いてほしい | 早急に議論し結論を出していただきたい |
高野連が公開した記録には、立場の違う人の発言が実名で載っています。大阪桐蔭の西谷浩一監督は「7イニング制には断固、反対したい」と述べ、知恵を絞れば9回のままでも対応できるとしました。掛川西の大石卓哉監督は「高校生にとっての1イニングは、単なる3アウトではなく、成長するための貴重な機会です」と話しています。一方で京都府立医科大学の木田圭重講師は「見に来ている父母や応援のブラスバンドの子たちに熱中症が増えているというのを肌で感じています」と述べました。暑さの被害は選手だけの話ではありません。

2026年の夏は9回制のままです。同年2月20日の理事会では、今年の夏から導入したほうがよいという意見と、報告書の意図が現場に十分伝わっておらず性急すぎるという意見の両方が出ました。今年の選手のことを考えるとこの時期に変えないほうがよい、という結論になっています。7回制は2028年の春からが望ましいという提案の段階にあります。提案であって決定ではありません。
両者とも高校球児を大切にしたいという思いは同じです。分かれているのは、急ぐか、立ち止まるか。そして大切にする部分への重みの付け方です。
変わるとしたら、いまの高校1年生が高校3年生になる年からかもしれません。あなたなら、どちらを選びますか。
今日は「高校野球の7回制」に関する、1つの事実、2つのニュースでした。
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The summer heat is a big problem for players.
夏の暑さは選手にとって大きな問題です。
heat は「暑さ、熱」を表す名詞です。形容詞の hot (暑い) と対にして覚えます。数えられない名詞なので a heat とは言いません。「暑さから身を守る」は protect yourself from the heat のように使います。準2級の例文に出てくる heatstroke (熱中症) は、この heat と stroke が組み合わさった語です。
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Some people want to make the games shorter.
試合を短くしたいと考える人もいます。
want のうしろに to と動詞の原形を置くと「〜したい」になります。make A shorter で「A をもっと短くする」という形です。shorter は short (短い) の比較級で、うしろに than 〜 を付けなくても「もっと短く」の意味で使えます。
I want ( ) watch the game.
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Some coaches are against the new plan.
新しい案に反対している監督もいます。
against は「〜に反対して」という意味の前置詞です。反対の意味を表す for (〜に賛成して) と対にして覚えると使いやすくなります。Are you for or against it? で「賛成ですか、反対ですか」とたずねる言い方になります。
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The new rule may start in the spring of 2028.
新しいルールは2028年の春に始まるかもしれません。
may は「〜かもしれない」と、まだ決まっていないことを表します。うしろは動詞の原形です。will (〜だろう) より確からしさが低く、今回のニュースのように「提案の段階で、決定ではない」ことを言うのにちょうど合う言い方です。
It ( ) rain tomorrow.
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The report says shorter games would reduce the risk of heatstroke.
試合を短くすれば熱中症の危険を減らせる、とその報告書は述べています。
reduce は「減らす」、risk は「危険」で、reduce the risk of 〜 は健康や安全のニュースでよく出る形です。heatstroke (熱中症) は数えられない名詞なので a は付けません。lower the risk of もほぼ同じ意味で使えます。
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2028 is the year when today’s ninth graders become high school seniors.
2028年は、いまの高校1年生が高校3年生になる年です。
when は「いつ」とたずねる疑問詞のほかに、前の名詞 (時を表す語) を説明する働きもあります。the year when 〜 で「〜する年」となり、the day when 〜 (〜する日)、the time when 〜 (〜する時) も同じ形です。この when のうしろには〈主語 + 動詞〉が続きます。
I remember the day ( ) we first met.
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今日の公民 - 働き方改革← クリックで表示されます
- 働き方改革とは、働く時間を短くして健康と生活を守る取り組みです。高校野球を7回にする理由の1つに、これが入っています。
- 部活動と大会の運営は、先生が授業のほかに担っている仕事です。高校野球の監督の92.9%は教員でした。
- 1つの改革は、立場によって得にも損にもなります。同じ30分でも、支える人には負担の軽減、球児には出番の減少になります。
①誰が支えているのか。高野連と朝日新聞社が2023年に行った調査では、硬式の加盟校の監督のうち92.9%が教諭や講師などの教員でした。都道府県の連盟の役員の多くも加盟校の教員で、大会運営の中心を担っています。審判員はそれぞれ別に職業を持ち、ボランティアで携わっています。滋賀県連盟の理事長は「各都道府県連盟の役員は、教員の仕事をしながら、休日や時間外に連盟のサポートをしています」と述べ、この人たちをこれからも確保できるのかという心配を挙げました。
②なぜ「時間」が改革の対象になるのか。働き方改革は、長く働くほど健康と生活が損なわれるという考え方に立っています。だから、仕事の中身ではなく時間の長さを先に減らそうとします。高野連の報告書は、試合時間が短くなれば大会運営を担う役員と指導者の負担が軽くなり、練習試合の時間短縮によって休日の拘束時間も減ると見込んでいます。7回制は選手のためだけの案ではありません。
③改革には、得をする人と損をする人がいます。同じ「30分の短縮」でも、大会を支える先生にとっては負担が減る時間であり、球児にとっては打席に立てたかもしれない時間です。働き方改革を考えるときは、「誰の時間が減るのか」と「その時間に何が起きていたのか」を分けて見ます。どちらか一方だけを見ると、賛成にも反対にも簡単に傾いてしまいます。
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漢字・語句← クリックで表示されます
記事の本文から採っています。
| 語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 連盟 | れんめい | 同じ目的のために団体や個人が結びつくこと。またその組織 |
| 検討 | けんとう | よく調べて、よいかどうかを考えること |
| 提案 | ていあん | 案を出して、こうしてはどうかと示すこと |
| 負担 | ふたん | 重荷として引き受けること。またその重荷 |
| 伝統 | でんとう | 昔から受け継がれてきた考え方ややり方 |